障害年金
家族に気づかれないように障害年金を受給することはできるのか
1 障害年金の受給
障害年金を家族に気づかれないように受給することはできるのでしょうか。
障害年金の申請自体は、家族の方に知られずにすることもできます。
しかし、ご家族がいる場合には、様々な場面で障害年金の受給に気づかれてしまったり、ご家族に障害年金を受け取っていることを説明しなければならなくなってしまったりすることがあります。
では、どのような場合に家族に気づかれてしまうことがあるのでしょうか。
2 年金事務所からの郵送物
障害年金についての年金事務所からの通知書等は、原則として本人の住所に郵送で送付されます。
代理人が障害年金の申請をした場合でも、結果等の通知自体はご本人の住所に郵送されてきます。
家族と同居していたり、家族が住所地に出入りしたりしている場合には、住所に届いた通知書等の郵送物を家族に見られることで、障害年金の受給を気づかれることがあります。
3 社会保険上の扶養を抜ける際の説明
障害年金は非課税ですので、障害年金を受け取っても税法上の扶養から抜ける必要はありません。
しかし、働いている方の収入が、障害年金と給与収入等の収入を合わせて180万円を超えた場合には、社会保険上の扶養から外れなければならなりません。
ご家族の扶養を抜ける際に収入についてご家族に説明を求められることで、家族に障害年金について気づかれることがあります。
4 配偶者加給年金の停止
老齢年金や障害年金を受け取っている方が配偶者加算をされている場合、配偶者が障害年金を受給した場合には加給年金が停止されます。
配偶者本人が障害年金を受給する代わりに、年金受給者が受け取っていた配偶者加給年金が停止するのです。
そこで、年金受給者の配偶者が障害年金の受給決定を受けた場合には、年金受給者からの障害年金を受給したことの届出が必要になります。
障害年金の受給開始が決まった時点で、年金を受け取っている配偶者に障害年金を受給したことを説明して、届出をしてもらわなければなりません。
届出の際の説明や年金受給者の年金受給額の変更により、配偶者に障害年金の受給に気づかれてしまうことがあります。
障害年金の対象となる人
1 障害年金の対象は思っているより広いです
障害年金の審査は、最終的には障害の「状態」で判断されることになっています。
例えば「知的障害」では受給できないが「うつ病」と診断されたら受給できる、というものではなく、現在の傷病が日常生活や就労に関してどのような影響を与えているかというのが基本的な判断基準となっています。
もちろん、検査数値等の基準が示されているものもありますし、ある程度の重い傷病の状態にあることが前提ですが、その基準は病名等ではなく状態であるという点がポイントとなります。
2 障害年金の受給には条件がある
上記のとおり、ある意味どのような傷病であっても障害年金の受給の可能性があるということにはなりますが、障害状態の審査の前に、そもそも障害年金の受給ができるかどうかについての前提要件を満たしていなければなりません。
3 初診日の特定
障害年金は、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類になっており(共済年金もありますが基本構造は同じですので説明は省略します。)、申請の種類は基本的に初診日の年金加入状況で決まります。
また、後述の保険料納付の要件も、初診日を基準に判断されます。
そのため、原則として初診日が特定されていなければならないことになっています(一部一定期間の特定で許容される場合等の例外があります。)。
初診日は、「申請傷病に関して初めて医療機関を受診した日」ですので、転院したらリセットされるというわけではなく、基本的に動かない日になります。
10年単位で治療を続けており、転院を繰り返しているような場合、カルテ等の医療記録が残っていなかったり、病院自体が閉院してしまっていたりして、特定が難しい場合があります。
4 保険料の納付
障害年金も年金制度の1つであるため、原則として一定の保険料納付が求められます。
基準は2つあり、①初診日の属する月の前々月までの直近1年間に未納がないか、②初診日の属する月の前々月まで全期間の1/3以上の未納がないかのどちらかの要件を満たしている必要があります。
なお、初診日が20歳以前の場合、そもそもまだ保険料納付義務がないことから、保険料納付要件は問題となりません(代わりに所得による半減ないし全額の支給停止という所得制限があります)。
障害年金でもらえる金額と障害年金の種類について
1 障害年金でもらえる金額と種類
障害年金は、まず大きく障害基礎年金と障害厚生年金とに分かれます。
また、1級から3級までの等級があるほか、治癒(症状固定後)の場合の傷病手当金があります。
さらに、ご家族構成などによっては加算も認められています。
以下、順番に障害年金でもらえる金額についてご説明いたします。
2 障害年金の基本構造と受給額
⑴ 障害基礎年金の種類
65歳からもらえる老齢年金については、いわゆる国民年金と厚生年金の二階建てになっている、ということをご存知の方も多いかと思います。
実は障害年金も年金制度の1つと位置付けられており、基本的な構造として、基本構造としては障害基礎年金と障害厚生年金の二階建てとなっています。
ただ、障害基礎年金は1級と2級しかなく、3級、障害手当金については障害厚生年金分しか認められない、という違いがあります。
⑵ 障害年金の金額
障害基礎年金の基本となる受給額は2級で78万0900円、1級で1.25倍の97万6125円です。
厳密には、この金額に対し、年度ごとに物価変動等を踏まえた改定率がかけられ、金額は変動していますので、実際の受給額は上記の金額とは限りませんのでご留意ください。
障害厚生年金の場合には、上記金額に加え、報酬比例の年金という分が追加で支払われます。
報酬比例部分は、厚生年金の納付額によって変動してしまうため、「人によりけり」ということになってきます。
⑶ 障害年金3級について
3級についてはやや特殊で、基本は報酬比例の年金額だけということになりますが、2級の0.75倍の58万5675円(×改定率)の最低保障が認められています。
そのため、例えば20代、30代等、厚生年金の総納付額が少ない方でも最低保障による受給が認められることになります。
なお、障害手当金は年金ではなく一時金で、報酬比例の年金額2年分、最低保障は上記金額の2倍の117万1350円(×改定率)となります。
3 加算
⑴ 障害基礎年金の場合
障害基礎年金についてはいわゆる「子の加算」があります。
子2人目までは1人につき22万4700円、3人目以降は1人につき7万4900円(×改定率)とされています。
「子」というのは18歳到達年度の末日までにある子(1級または2級の障害状態にあると認められるこの場合には20歳未満までに期間が伸長されます)。